田染幸雄の世界 自然との語らい

 
06
 
海に関して田染は、よくこんなふうに言っておりました。
〈なんど訪れても、その度にちがった海があって、
何時間見続けても、二度と同じ波は来ない・・
だからかなあ、無性に海を見たくなる時がある。そして、描きたくなるんだ。〉

天気予報を見ながら、〈この風向きだと波がつぶれてしまう〉とか、
また、〈明日あたりは、海がきれいだろう〉などと・・
そして、早々に支度をし、嬉々として出かけたこともありました。


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沢山の海を描いておりますが、
日本海を描いた絵は、ホームページ “海 その3”で紹介している
「潮騒(青森県深浦)」 だけだったようです。 

日本海と太平洋、それは彼にとって、
イメージ的にずいぶん異なった “海” だったようです。
新潟、富山、山口で、何度も日本海を見ているはずなのに
何故か描ききれなかったようです。

20数年前、五能線の森山海岸で、漁船と岩山のデッサンをしておりますが、
この時も、油での海の絵は描いておりません。

それが、2004年の1月、冬の鳥海山と岩木山を描きたいと旅に出ました。
あいにくの天候で、鳥海山は、裾野だけしか見えず、鉛筆デッサンで終わりました。
岩木山は、旅行中ずっと雲の中、雪のため五能線は運休して、
五所川原から弘前までは、臨時バスでの移動となりました。

こんな不安定な天候の中、深浦で、列車待ちのため5時間程の空白ができました。
幸いなことに風はなく、時々青空も見えて、
私たちは、海に張り出した岩場を歩いていきました。
水底の石がくっきりと見え、海の深さがわからないほどでした。
彼は、手ごろな岩に腰を下ろし、道具を広げています。

しばらくして私は、〈早くしろ、急げ!〉という彼の大声に驚ろかされました。
彼は、空を見上げています。
そこには、さっきまでとは全く異なった、真っ黒な雲がうごめいていました。
突然のように、風も出始め、海の色も、全くといっていいほど変わっていました。
〈あの岩陰でようすを見ない?〉という私を制して、
〈急ごう、早く道路に上がろう ! 〉
 
わずか2、30メートル程の距離、それなのに、道に戻った時の私たちは、
吹雪の真っただ中に居りました。
彼はこの時の印象を絵にしたのだと思います。



潮騒8Ps
         潮騒(青森県深浦)8P  
 
この絵は ホームページ・海その3 で拡大してご覧いただけます。







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